関節痛をきたす疾患
関節痛をきたす疾患
頸部(くび)、肩、腰部、大腿などに痛みやこわばりを生じる原因不明の炎症性疾患です。こわばりや痛みで「痛くて寝返りがうてない」「痛みやこわばりで起き上がれない」「肩や腕があがらなくなった」などの症状が現れます。リウマチと同じように全身の関節に痛みをきたす疾患であり、「リウマチ性」という名前がついていますが、リウマチとは少し違った病気です。
関節痛は手指や足趾(足の指)などの小関節よりも肩や股関節などの大関節にみられます。高齢者に多く、突然発症することで知られています。関節痛以外にも発熱、全身倦怠感、食欲低下、抑うつ状態、体重減少などの全身症状を認めます。治療にはステロイドが使用され、よく効くことが多いですが、難治性の場合や再燃を繰り返す場合は、その他の抗リウマチ薬を併用して治療をすることもあります。
脊椎関節炎は、体軸の関節に炎症が起こる慢性的な病気です。主な症状は、腰痛や背中の痛み、こわばりなどです。脊椎関節炎によって生じる腰痛は、運動によって軽減することが特徴的です。強直性脊椎炎は、脊椎関節炎の中で最も代表的な病気です。
脊椎、特に仙腸関節と呼ばれる骨盤の関節に炎症が起こり進行すると背骨が固まってしまうことがあり、国の指定難病となっています。痛みのある箇所の画像検査や、遺伝子検査などで総合的に診断します。
乾癬という皮膚疾患に合併する病気で、関節や腱付着部、指に炎症をきたす病気です。原因は不明で30〜50歳代に多く、男女比はほぼ同じです。日本人では乾癬の患者様の10~15%に発症するといわれています。
乾癬は、髪の生え際や肘、膝、でん部などに多く出現し、発疹と、銀白色のフケのような鱗屑(りんせつ)を認めます。治療は病気の進行抑制をしながら、日常生活の質を上げることを目標に進めます。重症の場合、最近では生物学的製剤やJAK阻害剤などの治療を行うことができます。
掌蹠膿疱症とは、手のひらや足のうらに、水ぶくれや膿がくり返しできる病気です。膿疱の中に菌は入っていないため、人に感染することはありません。掌蹠膿疱症は10〜35%に関節炎を合併することが知られており、これを掌蹠膿疱症性関節炎と言います。
またSAPHO症候群の代表的な病態の一つであり、同義で扱われることがあります。関節痛は胸骨と肋骨または鎖骨との間におこることが多いといった特徴があります。治療には消炎鎮痛薬や抗リウマチ薬が用いられますが、難治例には生物学的製剤が使用されます。
日本人の平均閉経年齢は、45〜55歳ごろにあたり、閉経前後の5年間を更年期と呼びます。この期間に現れるさまざまな症状のうち、他の病気での症状ではないものを更年期症状といいます。さらに、その中でも症状が重く、日常生活に支障をきたすものを更年期障害といいます。更年期障害の発症には、女性ホルモン(エストロゲン)の低下、また年齢に伴う体の変化と精神的・心理的な要因、社会文化的な環境因子が複合的に影響していると考えられています。
よく知られている症状としてのぼせ、異常発汗、イライラしやすくなるなどの気分変調がありますが、実は関節痛もかなりの頻度でみられます。当院では関節痛をきたす疾患を幅広く診療しておりますので、他の疾患を適切に除外し、更年期障害による関節痛についても積極的に治療を行っています。
尿酸の結晶が関節に沈着することで起こり、足の親指の付け根に激しい痛みが生じることが特徴です。足根骨、足関節、膝関節、手関節、肩関節などにも痛みが生じることもありますが、発作が起きるのは一度に1カ所だけで、複数起きることはあまりありません。
痛風の治療法としては薬物療法と生活習慣の改善がメインとなります。生活習慣の改善としては、過食を控えプリン体を多く含む食品(肉や魚の内臓や干物、エビ)やアルコールを控えます。過度な運動は尿酸値の上昇を引き起こすことがあるため、ウォーキングなど、負荷の低い運動が勧められます。
変形性関節症とは関節にある軟骨が加齢や負荷の蓄積によりすり減って、痛みをきたす疾患です。体重による負担が大きい膝で頻度が高いですが、手指の関節にもよく見られます。手指の先端の関節に起きる場合をヘバーデン結節、2番目の関節に起こる場合をブシャール結節と呼びます。
なぜ結節と言うかというと、軟骨がすり減ることで骨と骨がぶつかり、その結果骨に棘のようなでっぱり(骨棘)が出来るからです。これが表面からはゴツゴツとした固い出っ張りとして触れます。
構造的な変化が原因で起きている痛みなので、薬だけで完全に症状を抑えるのは難しいですが、鎮痛薬や漢方、関節注射などを用いて、症状を緩和する治療を行います。また、膝や股関節などの大関節では、人工関節置換術による治療も行われています。
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