膠原病
膠原病
膠原病とは、本来は自分の体を敵(細菌・ウイルス・腫瘍など)から守ってくれるはずの免疫機構に異常が生じ、全身の様々な臓器に慢性的な炎症を引き起こす疾患の総称です。自分の体を自分で攻撃してしまう病気であることから「自己免疫性疾患」とも呼ばれます。さらには、体の節々の関節に炎症を起こすことから「リウマチ性疾患」といわれたり、筋肉・骨・皮膚などの結合組織といわれる部位に病理学的な異常をきたすことから「結合組織病」などといわれることもあります。
膠原病は全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性筋炎・皮膚筋炎、全身性強皮症など多くの疾患に分類されます。また、同じ病気でも生じる症状はそれぞれであり、患者様ごとに必要な検査や治療は異なります。関節リウマチも膠原病の一つですが、関節リウマチ単独で、そのほかの膠原病をすべて合わせた患者数よりも多く、他の膠原病と区別される場合もあります。
膠原病の発症には遺伝的な要因と、環境的な要因のどちらも関与していますが、まだ原因はわかっていないことが多いです。近年では医学の発展により、膠原病の治療も進歩していますが、完治することは少なく、長期にわたって付き合っていく必要がある病気です。膠原病の中の一部の病気は、国から難病指定されています。病気の重症度によっては申請することで医療費の補助などを受けることができます。
免疫異常によって全身に炎症が起こり、発熱をきたすことがあります。また、関節や筋肉の痛み、湿疹、倦怠感、息切れなどが現れることもあり、これらはどの膠原病でも共通しておこる可能性があります。
熱が続いたり、原因不明の関節痛や筋肉痛、皮膚症状がみられる場合は、膠原病を疑ってみることが大切です。以下のような症状がある場合は専門医を受診されることをお勧めします。
膠原病の診断は、症状の経過、身体診察、血液検査・尿検査・画像検査などを組み合わせて、総合的に判断します。まず、全身を診察して膠原病が疑われた場合は、血液検査を行います。白血球数やCRP、赤沈などの炎症反応と呼ばれる一般的な項目に加え、確定診断には抗体検査などの特殊な項目の採血が必要です。その他、胸部や関節のレントゲン検査が診断の手助けになったりすることもあります。また、尿検査での蛋白尿や血尿なども重要な所見となります。
膠原病は全身の疾患であるため、このような色々な検査が必要となってきます。抗核抗体やリウマチ反応が陽性でも、膠原病ではないことも多く、しっかり見極めることが重要になります。また、膠原病はそれぞれに診断基準が定められていますが、必ずしも初めから診断基準を満たすものばかりとは限らず、慢性の経過をたどることが多いため経過観察が必要になることもあります。
近年の医学の進歩によって、膠原病の生命予後は大きく改善しています。ステロイドを用いる治療法が一般化するとともに、免疫抑制剤や生物学的製剤の開発が進み、これらを併用することでステロイドの副作用を最小限にしつつ病気の勢いを抑え、再発を防ぐ治療を目指せるようになっています。
しかし、現在でも診断がつきにくく、治療には専門知識が必要であるため、専門医のいる医療機関での管理が不可欠です。当院では最新の膠原病の知見に基づいて、一人ひとりの患者様の病状やライフスタイルにあった適切な治療に取り組んでいます。
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