骨粗鬆症
骨粗鬆症
骨粗鬆症は、骨がもろくなってしまい、骨折しやすくなる病気です。骨には骨芽細胞という骨形成を行う細胞と、破骨細胞という骨吸収を行う細胞が存在します。骨形成と骨吸収がバランスよく作用することで、骨は常に新しい骨へと作り変えられていきます。これを骨のリモデリングと呼びます。
加齢やホルモンの変化により、リモデリングのバランスが崩れ、骨吸収が進んで骨量が減り、骨密度が低下した結果が骨粗鬆症です。骨密度が低下していく過程で何かしらの自覚症状が現れるということはありません。しかし、骨密度が低下するに従って骨折しやすくなるというところがこの病気の怖いところです。特に骨折が起きやすい場所として背骨(脊椎の圧迫骨折)、手首の骨(橈骨遠位端骨折)、太ももの付け根の骨(大腿骨頚部骨折)などがあります。
骨粗鬆症は進行してしまうと、なかなか改善が難しい疾患であり、早期に発見し、悪化しないように予防や治療に努める必要があります。特に40歳以上の女性の場合はエストロゲンの減少に伴い、骨芽細胞の活性が低下し、骨粗鬆症のリスクが高くなります。また、関節リウマチの患者様は、一般の人と比べ、骨粗鬆症のリスクが2倍ほど高いと言われています。
関節リウマチでは関節内に炎症性物質(サイトカイン)が見られ、これが骨吸収をおこなう破骨細胞を活性化させるためといわれています。膠原病治療で広く使われるステロイドも骨粗鬆症を助長することが知られており、こういったリスク因子を抱えた患者様では、定期的な骨密度検査を行うことが大切です。
骨粗鬆症の診断は、骨粗鬆症に特徴的な脆弱性骨折(ご本人が自覚していない骨折)の有無、および骨密度の数値などを参考にして行います。診断がつけば、他の疾患が原因となっていない原発性骨粗鬆症なのか、あるいは疾患が原因となっている続発性骨粗鬆症なのかを鑑別し、その結果をもとに治療方針を検討します。
骨密度は骨の強さを判定するための代表的な指標です。骨密度検査では骨の中にカルシウムなどのミネラルがどの程度あるのかを測定します。
波長の異なる2種類のX線を用いてその吸収率の差から、骨密度を測定します。当院では腰椎と大腿骨頸部の骨密度を計測し数値として表します。この方法は現在、骨粗鬆症に関して最も精度が高い検査と考えられています。
若い人の骨密度の平均値(young adult mean:YAM)と比較し、自分の骨密度が何%であるかが示されます。YAMが80%以上かつレントゲンで骨粗鬆化がなければ正常と判断します。
骨代謝マーカー(骨の新陳代謝を評価)やビタミンDなどを測定することで、骨密度が今後どのように変化していくかを予想することができ、治療の必要性や治療方針(治療薬の選択)を決めるのに役立ちます。また、骨粗鬆症治療開始後の効果判定にも有用です。
骨粗鬆症はタイプによって治療に用いる薬剤が異なります。閉経後で骨折リスクが高い(骨密度が低い)方は、ビスホスホネート製剤(骨の吸収を抑える薬剤、経口薬と注射があります)などが用いられます。骨折リスクの低い方には、活性型ビタミンD3製剤や選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM:selective estrogen receptor modulator:エストロゲンを補う薬剤)を用いるケースが多いです。
また、治療にも関わらず、骨折リスクが高い方は、PTH製剤やヒト化抗スクレロスチンモノクローナル抗体など骨形成を促進させる注射製剤が用いられることがあります。最近では、作用機序の違う薬剤の併用療法も骨折リスクを減らすことが分かってきました。患者様の年齢や病態に応じて治療薬を選択します。
骨密度を増加させるためにはカルシウムの摂取とともに、カルシウムの吸収を促進するビタミンDや、骨へのカルシウムの取り込みを助けるビタミンKなどの栄養素も必要です。エネルギーと栄養素を過不足なく摂取することがポイントになります。
牛乳・乳製品は、カルシウムの含有量が豊富なだけでなく、吸収率もすぐれています。適量の牛乳・乳製品を積極的に摂りましょう。カルシウム摂取量を増やす工夫として、小松菜などの緑黄色野菜、ひじきなどの海藻、豆腐などの大豆製品なども取り入れると良いでしょう。
ビタミンDは骨量を保つうえで重要な栄養素で、食事と日光(紫外線)から体内に供給します。魚類(サケ・サンマ)やきくらげなどの食品を意識して摂りましょう。ビタミンDは日光が皮膚に当たることで活性化します。手や足に1日30分から1時間程度、日光を浴びるだけでも効果が期待できます。
ビタミンKは納豆や海藻類、緑の葉の野菜などに含まれています。これらの食品を毎日の食事にバランスよく取り入れましょう。
運動不足は骨密度を低下させる要因の一つです。適度な運動は骨に圧力がかかり、その刺激が骨の形成を促進します。日常のなかに散歩や階段昇降などの運動を習慣として取り入れましょう。ウォーキングの目安としては、1日8000歩、週3日以上で骨密度が上昇するという報告があります。
また、運動は転倒予防にも重要な役割を担っています。運動不足は筋肉量の低下を起こし、転倒リスクが高まります。転倒は高齢になるにつれて発生頻度が増加しますが、転倒により、大腿骨頚部を骨折してしまうと寝たきりの生活を余儀なくされます。無理のない運動を継続して行い、骨と筋肉の健康を維持していきましょう。
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